L/Journal
Collaboration Works
Vol.14

Line Art

artist

Eri Yoshida

2024.08.16

表参道ヒルズ店OPENに合わせ
ヨシダエリのアート展が開催

2024年8月、表参道ヒルズにhueLe MuseumのNEWSHOPがオープン。そのオープニングイベントとして開催されるのが、今注目のアーティスト、ヨシダエリさんの線画アート展だ。広告や雑誌などで目にする機会も多いヨシダエリ作品だが、2024年春はさらに大きな飛躍が。世界中からアートの目利たちが訪れることで有名なArt expo New York 2024へ作品を出展、みごとBEST INTERNATIONAL EXHIBITOR賞を受賞した。
和紙に黒・赤・白のカラーで日本女性の表情や佇まいを描いた作品たち。色の濃淡や線のかすれを生かしたアートは、見る者の想像力を掻き立て、そこにいる女性の思いのようなものまで伝わってくる独特のニュアンスがある。

「少し前に、作品コンセプトを少し見直してみようという思いで、美術史や美術の概念や思想などを改めて勉強した時期があったんです。その中で出会った日本の美術の“不完全なものの中に見出す美しさ”みたいな概念にすごく共感したんです。私が作品作りにおいて意識していたこととすごく似ていて。そんなことがきっかけで、和紙とか墨とか日本美術に使われているものを使って描いてみよう、と。そして描き溜めたものをArt expo New York 2024に出展しました」

今回の表参道イベントには、その出展作品たちと描き下ろしの新作数点が展示される。

日本の美を意識した作品から、
ボーダレスに共感を呼ぶ作品へ

Art expo New York 2024で高い評価を得た、和紙や墨の質感、潔い配色の線画アートたち。“自分の作品を見た人の心が少しでも動くことが、アーティストとしての何よりの幸せ”とエリさんは言う。ニューヨークでの評価は、日本で感じるものとは何か異なる部分もあったのだろうか?

「私自身は特に人種を意識して作品を描いていたわけではないんですけど、墨で髪の毛を塗っていたこともあって、『これはあなた?』って聞かれることが多かった。確かに、Art expoに世界中さまざまな国から訪れる人たちの目には、そこに描かれているのは“黒髪のアジア人女性”に映るかもしれない。そういう感覚をはじめて経験しました。

アートを見てもらうときに、私がいちばん大切にしているのは“共感してもらえること”。異国の女性が描かれているという印象のほうが強烈だったのであれば、共感という意味では少し遠かったのかなと思っていて。国籍とか人種とかが違っていても、考えていることや悩んでいることの根底の部分で通じるものって絶対あると思うんです。今後は、その根底の部分も描くことをさらに意識して、ボーダレスに共感してもらえる作品を模索していきたいと強く思っています」

ネガティブなものも受け入れてこそ
本質的な美しさと出会える

作品を作り続ける力は、見てくれる人の“共感”から生まれるというエリさん。表参道ヒルズでの展示でエリさんが見てくれる人に届けたいメッセージとはどんなものだろう。

「私の場合、日常とかけはなれた夢物語っぽいシーンとかにはあまり惹かれないんです。多少キラキラ感はあったとしても、根底の部分で自分の日常の延長線上にあるリアルなものを描くことにこだわりたいなという思いがあって。
たとえば、お酒に酔ってグダグダしている感じとか、朝起きられなくてちょっとだるい表情とか。作品を観た人に、“あ、こんな感じでもいいんだよね”とか“私まだ頑張れそうだな”みたいに思っていただきたいんですね。“ダメな自分も受け入れていいんじゃない?”みたいなメッセージを届けられたら」

“私自身、自分に自信があるタイプではないからかも”という意外な言葉。広告や雑誌で引っ張りだこのエリさんからはちょっと想像していなかった。

「どんな作品を描くときも、私は自分の中のポジティブではない感情をすごく大切にしていて。そのネガティブな感情と向き合うことで、自分を認めたり自分を許したりする過程を作品へと昇華させている感じなんです。

例えば、私の線画作品の中の線は決して完璧に美しいものではないです。強弱があったり、揺らいでいたり、濃淡があったり、かすれていたりする。でも、そこには、私にだけは明確にわかる美しさがあります。ただきれいなだけの線ではなく、ネガティブな要素も含みながら本質的な美しさがある。それは何か“不完全なものの中に見出す美しさ”っていう日本美術の概念にもつながっているなと感じています」

見る人それぞれが、自分を投影できるアート。
ぜひ表参道ヒルズで体験してみて

ヨシダエリさんの作品にはコスメやファッションアイテムがたくさん登場する。実はそこにも、自分を受け入れていこうというメッセージが込められているという。

「自分のお気に入りのものや素敵だなと思うものを身につけていると、気持ちを強く持てたりする。しんどいときとか落ち込んでいるときでも、好きなファッションやメイクでなら堂々と歩ける気がするし、姿勢や表情も変わってくる。そんな自分に自信を持たせてくれるアイテムはなくてはならない大切な相棒。そんな思いで描いています。やっぱり基本的に自分に自信がない人間なので(笑)」

エリさんの作品には、ちょっとしたことで自信をなくしたり、落ち込んだり、理想と現実の間で悩んだりする女性をやさしく包み込むようなやさしさがある。“自分らしくいていいじゃない”とそっと背中を押してくれるような。

「私の線画は、不完全な線を描くことと同時に、空間に余白を描くことも意識しています。その余白に見る人の心が入り込むことで作品が完成する感覚です。
表参道ヒルズの展示でも、それぞれの作品にぜひご自身を投影してみてほしいな、と思います。そうすることで、その作品がその人だけの作品として心に残れば最高に幸せです」

ヨシダエリ Eri Yoshida

線画アーティスト / Line Artist
美大卒業後Webデザイナーとして働いた後、アーティストとして独立。アパレルブランドやプロダクトメーカーとのコラボレーション、雑誌・書籍のイラスト制作をはじめさまざまなブランドでのポートレートイベントやライブペイントなど多方面に精力的に活動中。

Website: https://queenmajesty-design.com/
Instagram: @eri_qm

Photographs / Videographer and editing : yoichi (TAKASE OFFICE Inc.)
Editor : HIROMI KATAYAMA